2015年08月31日

シュルレアリスムのような雰囲気

部屋-1.jpg


だいぶ前に描いたデジタルイラストです。
ジョルジョ・デ・キリコの画集を見ていたら
なんだかムラムラしてきて…勢いで描いた謎の絵です。

こういう絵をデジタルで塗るとどうなるんだろうと思い、
デジタルで着色しました。
そして微妙な結果になりました。

やはりこういう絵は絵の具を使って描いたほうが
迫力と味が出ますね。

形而上の二処女14.jpg

↑自作漫画のワンシーンにこれと同じ下書きを使用して
描いたページがあります。
線画としても漫画としても微妙な結果に。

うーん。
なにがしたいんだ私は。


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posted by イオ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | デジタルイラスト | 更新情報をチェックする

2015年08月22日

ヘンリーダーガー氏について考える

ヘンリー・ダーガー非現実の王国でチラシ.jpgヘンリー・ダーガー非現実の王国でチラシ2.jpg

先日ご紹介したヘンリー・ダーガーについてですが…
もう少し彼について考えてみました。

実はダーガー氏の作品と人生を紹介するドキュメンタリー映画が過去に公開されていて、
そのときのチラシが本棚から出てきたのでスキャンしてみました。

ダーガー氏はなぜこのような性格…つまり、
病院の清掃人兼皿洗いという底辺の仕事をしながら、
それ以外はほぼ一切人と関わらず、ひたすら60年間も自分のためだけに
手の込んだ絵と小説を創作し続けるような人間になったのか…?
という部分が気になります。

おそらく、というかほぼ確実に、幼少期の環境に原因があると思います。
母親は女児を出産した際の感染症で35歳で亡くなり、
その女児…つまりダーガー氏の妹はすぐに養子に出されており、
この妹とはそこで生き別れになるわけですが、
このことはダーガー氏にとってとてもショックだったようです。
また、父親は高齢で、なんやかんやでダーガー氏は幼いころから
施設に預けられることになってしまいます。
知能には何の問題も無かったようですが、、感情障害のような傾向があったようで、
そのために知的障害児を収容する施設に入れられてしまいます。
そこで多感な少年時代を過ごさなければならなかったという…。
そこで精神が屈折してしまったのではないでしょうか。
そして17歳のときに施設から脱走し、前述のとおり
病院の清掃人兼皿洗いという底辺の仕事をし始めるわけです。
その後転々と同じような職に就きながら、
絵と小説の創作活動をひっそりと行っていたというわけです。

やはり幼少期や多感な時期に抑圧されてしまうと、
その後の人生に多大な影響を及ぼしてしまうようですね。
これはダーガー氏に限ったことではなく
古今東西男女関係なくそうなってしまうように感じます。

ヘンリー・ダーガー男の娘.jpg
また、ダーガー氏の絵についてですが、
色々突っ込みどころ満載で興味深い絵ばかりではありますが、
とても気になるのが「少女にペニスが生えている」という点です。

これは…ジャパニーズキモオタ的な見地に立って考えると、
「ふたなり」「男の娘」……という雰囲気がします。
この「少女にペニスが付いている」という現象については、
色んな人間が色々と憶測で分析しています。

ダーガーは生涯童貞だったから女の体を見たことがなかったからではないか…とか、
ダーガーは同性愛者だったのでは…とか。

正直どちらも違うと思うんですよね。
いくらなんでも女の体の構造を全く知らなかったとは思えません。
画集の解説にも、子供たちが惨殺されて内臓が飛び出ている描写を受けて、
「循環器系や腎臓、大小臓器について正確に知っていながら、
女性器がどうなっているかを知らないなんてありえないのではあるまいか。」
と書かれています。私もそう思いますね。

また、同性愛者ってのもちょっと違うように感じます…完全否定はできませんが。
おそらくダーガー氏は、生身の人間(特に大人)には
性的な感覚を抱けないタイプの人間だったのではないのかと…
あくまで憶測ですが、なんとなくそういった雰囲気を感じます。

なのでペニスがくっついているのは、
ある種の自己投影というか、少女に自分を重ねやすいように
無意識的にくっつけてしまったのではないかな…なんて思います。

ダーガー氏の小説は「ヴィヴィアン・ガールズ」という女の子たちが
なんやかんやすごいスペクタクルな展開を切り抜けていくという内容なのですが…
その描写がまた生々しくて…まるで本当に見てきたかのような描写なんです。
ダーガー氏のものすごい想像力を感じさせられます。

絵や小説の内容についてはググると色々出てきますので…
ご興味のある方はググってみてください。
鮮やかで色とりどりの絵は…ほんとに変な迫力があって夢に出てきそうです。

それにしても、どうしてこんなにでかいサイズで描いたのだろうか。
ペニス付き少女よりもそっちのほうが謎です。
小さい絵もたくさん描いているんでしょうけど…3メートルを超える長さって…なぜなの。
なぜお金をかけてまで写真を引き伸ばして大きくしたかったの…?
やはり大きくて長~い絵に囲まれている方が、その世界に入り込みやすいからでしょうか。
よりリアルに自分が「非現実の王国」の住人になれるからでしょうか…。

すごいエネルギーだよ。
いやほんとに。

↓では最後に映画の予告編を…。


2015年08月09日

ヘンリー・ダーガーの画集『非現実の王国で』を買ってしまった。

ヘンリー・ダーガー画集表紙.JPG
ヘンリー・ダーガーの画集を…買ってしまったよ…。
な…ななせんえん…7000円もするんだぜこれ…。へへ…どうしよう。

深夜のネットショッピングほど怖いものはないとわかっていたはずなのに…。
ついついポチってしまった。

■ヘンリー・ダーガーとは■
ヘンリー・ダーガー(Henry Darger, 1892年4月12日 - 1973年4月13日)は
『非現実の王国で』の作者である。誰に見せることもなく半世紀以上もの間、
たった一人で作品を書き続けたが、死の直前にそれが「発見」され、
アウトサイダー・アートの代表的な作家として評価されるようになった。
彼の姓は「ダージャー」と日本語表記される場合もあるが、
実際のところ「Darger」の正しい発音すら判明していない。
ダーガーは孤独の中に生きており(生涯、童貞だったとされる)、
職場である病院と教会のミサに通う他は自宅アパートに引き籠っていた。
会話を交わしたことのある数少ない隣人も、それぞれ異なる発音で彼を呼んでいる有様である。

(Wikipediaより―ヘンリー・ダーガー

ヘンリー・ダーガー画集表紙2.JPG
前々からその存在は知っていて、とても興味を抱いていました。
しかしながら積極的に作品を見ようとしたり調べようとしたりすることはなかったのですが、
なぜかここ最近ダーガー氏と自分が重なってしまってw
いや、自分なんかクソだからダーガー氏の足元にも及びませんが、
なんというか…なんだか他人事とは思えないのです。

しかしながらこの画集の価格の高さはなんなんでしょう。きっと…

「こんなもん買うのは物好きのコレクターだからコレクション価格にしても売れるだろう」

って計画なんでしょうね。うん。もののみごとにその計画は成功です。
果たしてこの画集に7000円の価値があるのかどうか…って感じですが、
少なくとも私にとってはありました。たぶん。

ただこの画集は、絵と文章がほぼ半分ずつなんですよね。
もっと多くの絵を掲載してほしかったな。

■ざっくりした感想■
なんというか、すごいです。圧巻ですね。
ダーガー氏はトレースしてその絵をずらっと並べて着色して…という
独特な手法で創作していたそうです。
そして小さいイラストをわざわざフィルムで引き延ばして大きくしてトレースする、
という手間暇とお金をかけてまで制作し続けたそうです。
そしてその大きさが…大きいものだと長さが3メートルくらいの巻物みたいな作品もあります。
同じ顔の少女たちがずらっと並び、極彩色で彩られている様子は不気味だけど、
すごく癖になる不思議なオーラがあります。

ヘンリー・ダーガー画集_雲の絵.JPG
↑そして、背景の雲の様子を描くのがとても上手です。
(中身を載せちゃいけないけどこれくらいならいいよね…。)
なんでもダーガー氏は「お天気フェチ」だったそうで、
特に荒れ狂う嵐とかそういった天候が大好きだったと解説に書いてありました。
日ごろから常に空を観察していたようで、
そりゃ雲を描くのも上手になるわな、と納得しました。
雲の部分はトレースじゃないよね…?どうなんでしょう。

また、ダーガー氏のこれらの絵は、あくまで小説の挿絵なんですね。
ダーガー氏はとてつもない膨大な小説を書き続けていたわけです。

これをねぇ、自分のためだけに60年間描き続けて、
周囲から評価を得たいとか、発表したいとか、人に見せるとか…を一切せずに、
ただただひたすら自分のために描き続けて描き続けて…ってのがほんとに感動します。
ダーガー氏は81歳でこの世を去りますが、
死に際に大家に持ち物の処分を問われた時、「Throw away(捨ててくれ)」と答えたそうです。

…おそらくダーガー氏のこの『非現実の王国で』は、
とてつもなく壮大な超弩級の「黒歴史ノート」だったのではないでしょうか…。
黒歴史ノートが死後全世界中に発表されてしまうとか、ある意味酷いですよね(笑)
おそらくダーガー氏は草葉の陰で

「ヒィィ…捨ててくれと言ったのになぜ捨てなかったんだよ…
 アウトサイダー・アート?知るか!そんな御大層なもんじゃねーよ!
 遠い異国の地のわけわからん女までどうして俺の絵を見てるんだよ…!勘弁してくれ」

って思っていると思います。赤面しているだろうな…。
もしかしたら怒っているかもしれませんね。

死に際に大家にきっぱりと「捨ててくれ」と言い放ったってのも感慨深いです。
「あぁほんとに自分のためだけに作り上げた、自分のためだけの世界だったんだなぁ」
としみじみ感じます。泣ける。
これだけ手間暇かけたライフワークを「捨ててくれ」ときっぱり言えたってことは、
自分の死期が迫っているから、作品も共に死ぬべきと思ったんでしょうか。

しかしね、ダーガー氏は一歩間違えば犯罪者になっていたと思います。
作品の中にはとてもサディスティックな描写があります。
少年少女をこれでもかと拷問したり虐殺したりしているんですね。
やはり引きこもったり、異性との接触がとても少ないと、攻撃的な性質を持つようになり、
性欲やらなにやらが歪んでいくんだと思います。
正直、最近出回っている一部の男性向け同人誌…とかの
少女に対する異常なまでのサディスティック精神と同じような臭いを感じます…。
いや、それとダーガー氏の作品を同列に語りたくはありませんが、
おそらく精神の根っこの部分は似ているのではないのかな…と思います。

なので、ダーガー氏は、情熱が変な方向にひん曲がっていたら、
少女を狙った性犯罪やシリアルキラーになっていた可能性が高いです。
しかしながらそうならなかったのは、創作意欲と、キリスト教への篤い信仰と、
あくまで“正気”であり、異常者にはならないギリギリ平凡な精神構造だったからだと思います。

しかしながら…こういった作品に美術家とかが大真面目な解説をしているのを見ると、
なんだかちょっと笑ってしまいます。
この画集の解説も
「とても素晴らしい表現だ!これほどまでの表現は美術史においても類を見ない…云々」
とか書かれていますけど、なんというか…うーん。
こういった超特殊な作品は、美術家がうんぬんかんぬん言ってもあまり説得力がないですね。
ただ、精神分析という観点から見るととても興味深いと思います。


…そんなこんなで、この画集にはなかなか感動させられました。
だいたいね、ダーガー氏の死後、
アパートのオーナーで美術家でもあるネイサン・ラーナーという人がたまたま作品を見つけて、
「こ…これはすごい作品だ!保存しなきゃ!」と思った…ってのもすごい奇跡ですよね。

この大作を60年間、自分のためだけに、誰にも見せずに描き続けた…ってのがほんと泣ける。
泣ける…。そして尊敬する。

でも本人はきっと捨ててほしかったんだろうな(笑)




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