
『ツァイトガイスト 時代が創り出す思想』という
2011年に公開されたドキュメンタリーを観ました。
制作者は自主映画製作者ピーター・ジョセフ氏。
なかなか良い作品だと思います。
ちょっと長いですし、かなりお堅い雰囲気の作品ですので…
集中して全部観るのは結構疲れました。
途中で眠くなって意識がもうろうとしました。
しかしながら、この作品では、
私がここ数年沸々と疑問に思っていたことを実にわかりやすく、
そして専門的に掘り下げて紹介してくれています。
たまにツッコミを入れたくなる部分もありますし、
内容を盲目的に信奉するようなことはしないほうが良いですが、
私は…まぁ概ねこの作品の主義主張には賛成です。
下記、個人的にグッと来た部分の字幕を書きだしてみました。
人間の神経生物学的な要素と
人が育ち存在している環境は切っても切れない
この関係は死ぬまで続く
人類は様々な社会を作ってきた
狩猟採集時代は食物分配や物々交換などをし、皆平等主義であったようだ
小さな集落の人々は主に採集と少しの狩りをしながら共に生活していた
親類や縁者に囲まれていなくても、人々は互いの暮らしぶりを知っており
物質文化とはかけ離れた世界があった
これが人類の元々の生活であり、当然今とは完全に異なる世界だ
違いの一つに暴力が少ないことが挙げられる
このような社会で組織犯罪が起こらないのは明らかであるようだ
現在では人口の1パーセントが地球の40パーセントの富を所有する状態にある
これを別にしても、不平等社会の根底にある何かが
社会の健全さを破壊する原因となっている
人々は空前の富をもたらす社会的な成功と
膨大な社会的欠陥の狭間で困惑しているように思える
若者の薬物乱用や暴力行為、自傷行為、精神病患者の多さを見ると
この社会は明らかに何か間違っているとわかる
不平等が社会的腐敗をもたらすというこの洞察は想像以上に正しい
不平等は社会的に多大な影響力を持つ
人に対する優越感や劣等感などよりも
このような分断や人への尊敬や蔑みにより人は下層階級を蔑視する
だから不平等な社会には暴力が多いのだ
人に対する蔑視は暴力の引き金になる
……などなど、実にためになることを始終語ってくれています。
上記はそのほんの一部です。
上記に書きだした中で特に共感するのが…
>若者の薬物乱用や暴力行為、自傷行為、精神病患者の多さを見ると
>この社会は明らかに何か間違っているとわかる
……と言う部分です。
以前ネットで見つけたのですが、どっかの精神科医かなんかがブログで、
引きこもりや不登校、ニートの息子を連れてきて
“この子おかしいんです。助けてください。”と言ってくる親が居ます。
たしかに、連れてこられた子供は病的だし、おかしいです。
しかしながら、詳しく話を聞いているうちに、
本当におかしいのは周囲であることがわかりました。
家族関係や子供を取り巻く環境がとても歪んでいることに気づきます。
子供は、その歪みをまともに受けてしまった結果、おかしくなってしまったのです。
まず変わるべきなのは環境や社会全体のほうである場合が多いのです。…と言うようなことを言っていました。うろ覚えですが。
つまり、近年発生している様々な問題は、個々人にも原因はあるでしょうけれども、
周囲…つまり環境や社会システム自体にも問題があると考えて良いと思います。
また、この作品の冒頭では乳幼児や胎児にとって、周囲の環境がいかに大切であるかが
科学的根拠に基づき詳細に語られていました。
母親の精神状態や感受性、表情などが子供に与える影響のデカさに驚きました。
最近の日本の母親は妊婦時代から多大なストレスにさらされているように感じます。
となると、それはとても危惧すべきことです…。
このままでは、精神疾患を患ったり依存症になりやすい子供が増えてしまうことでしょう。
ただでさえ色々と面倒な過剰反応社会にさらされて精神不安に陥る可能性が高いというのに。
…そんなこんなで、色々なことに言及されている作品なのですが、
最終的に、この世界がおかしくなった最大の原因は
金融市場…つまり社会経済システムにあると言っています。
そして、昨今のテクノロジーの進化やその他様々な要因によって
大量消費社会は終焉を迎えつつあると指摘しています。
下記、作品の後半の字幕を書き起こしてみました。
機械化が進むほど失業者が増え
人々の購買力が下がる
企業が生産コストを抑えるといくら商品が安くても
物を購入できる人が減っていくのだ
収入のための労働ゲームは徐々に終焉に近づいている
すぐにでも機械化されそうな仕事について考えてみると
世界の労働人口の75パーセントが明日職を失うことになる作品では、このあと「金ベースの社会ではなく、地球資源ベースで考えた
万人に平等なクリーンな世界を構築するべきだ」と話を展開させます。
そして最終的にはそれを実行するための具体的な案を紹介しています。
しかし、この「具体的な案」ってのにちょっと無理があるように感じました。
「資源を大切にし、効率よく継続して人類が繁栄できるように
テクノロジーを駆使したコンピュータシステムで細かい計算をして、
自然を壊さず、争いを起こさないような平和的世界を実現させる。
人々は労働から解放され、金銭報酬と関係なく社会貢献活動をしながら
暴力のない穏やかな生活を営んでゆく」……といった雰囲気なのですが、
CGでイメージ化されている世界を見てみると、とても機械化されすぎているんですよね。
私は
以前の記事で「テクノロジーをある程度残した状態で自給自足するというのが
理想的な世界のような気がする…」と述べましたし、その考えは変わってません。
なので、この作品で最終的に提案されている超ハイテクな世界を、
もう少しアナログ化させた方が良いのではないのかな…と思います。
生活に必要な最低限の衣食住は“そこそこハイテク化”された
国や自治体のシステムから支給され、
それにプラスして各家庭で家庭菜園などを行い、自給自足をモットーとした生活を送り、
余った時間を個々人の特技や趣味や発明を充実させるために使う…
という生活が一番良いのではないのかな、と思います。
また、規模の大きい自然災害にも強い社会を構築しないといけないので、
そのへんもきちんと考えてゆくべきですね。
最終的には個々人がどんな状況でもやっていけるような
スナフキン的精神と技術を身に着けることが必要となってくるでしょう。
これから先の未来について
本当に真剣に考えないといけない時代に突入したと思っています。
いやほんとに。
言うのは簡単ですけど、実行するのは難しいですね。
しかし、イヤでも実行しないといけない時期がいずれ来るでしょう。
キレイゴト言いたくはないのですが、いまの社会システムはかなり無理があり、
色々なことが限界に達していると思いますよ。
人類はこっから精神的進化を遂げないといけない…のかもしれない。